歯科症例2 平板破折
破折とはいわゆる歯が折れたり、割れたりすることを言います。この破折、意外に見ることが多い症例です。犬の場合、破折の起こりやすい場所は犬歯と上顎第4前臼歯です。犬歯の場合、歯内治療を施すことで歯を残すことが可能な場合も多いのですが、第4前臼歯の破折は平板破折といって、歯肉下まで割れるようになる場合が多く、修復が難しく、抜歯が必要な場合もあります。
症例1(ラブラドールレトリバー 3才 オス)
写真は処置前の写真で、歯が歯肉下まで割れているのがわかります。また破折した部分に露髄も確認され(赤い部分)、歯石の付着具合から破折して時間が経過していることがわかります。
処置前のデンタルレントゲン所見
歯髄への感染から、すでに根尖部に病巣が認められます(歯の根っこの部分が黒く抜けている部分が病巣です)。
抜歯を行うためと、抜歯後に縫合を行うフラップを形成するために、歯肉を剥離している所です。
上顎第4前臼歯は三根歯(歯根が3本ある歯)のため、そのままでは抜歯することはできません。抜歯するために、歯をエアードリルで分割します。
抜歯後の写真です。
このまま露出するのは良くないので、抜歯した部分の歯槽骨(顎の骨)をスムーズに研磨し、フラップをかけます。
処置終了後の写真です。
抜歯した部分にフラップをかけています。
この子の場合はすでに根尖病巣があったため、抜歯という方法を取らざるを得ませんでしたが、破折の状況によっては抜歯せずに修復を行うこともできる場合があります。
犬の咬合は前にも書いたかもしれませんがシザーバイトといって、鋏のように咬合します。鋏で石を切ろうとしたら刃こぼれしますよね。破折はまさにそのような状態です。硬いものを噛むことで容易に破折してしまいます。
病院で、よくみる破折の原因はひづめや非常に硬いプラスティックでできた噛むおもちゃです。気をつけてあげて下さいね。