奇跡の2年
院長の雑談 2012.04.02
久しぶりのブログの更新ですが、今日は悲しいけれど、うれしいことがあったので、久しぶりに書いています。
マルチーズのキナちゃんが病院に来たときは、舌の部分に腫瘍ができ、その腫瘍の影響で下あごの部分が自潰し(腐ってしまう事)、膿が出ている状態でした。また腫瘍の影響で舌がうまく動かず、食事も食べれず、かなり衰弱していました。
別の病院での治療を受けられていましたが、はじめは歯周病と言われて口腔内処置をしたけれど改善がなく、最終的に腫瘍と言うことで手のうちようがないということで当院に来院されました。
確かにすでに手術で摘出できるような状態ではなく、腫瘍に対してはあまり治療の選択枝は無いことはひとめでわかりました。ただ、キナちゃんは舌の根元にできた腫瘍のせいで食事が食べれず衰弱はしていましたが、食事は食べたがるということでした。今のままでは腫瘍で亡くなってしまう前に、餓死をしてしまうことは明らかでしたので、飼い主さんにはキナちゃんの病気自体を治してあげることはできませんが、食事の管理をしてあげて、食べたいのに食べれなくて死んでしまうことだけは避けれると思いますということで胃瘻チューブによるチューブフィーディング(内視鏡を使って胃に直接チューブを入れて、食事を与える事です)のご提案をしました。
飼い主さんは悩まれていましたが、チューブフィーディングをする決断をされ、その日のうちに胃瘻チューブを入れました。胃瘻チューブから食事を与えるようになって、キナちゃんはみるみる元気になっていきました。チューブから投薬できるようになって、腫瘍自体は変化はありませんでしたが、感染をコントロールできるようになり、一時はのどの傷も閉じ、見た目はまったく普通の子と変わらないくらいでした。僕たちもご家族のみなさんも、病気は治ったんじゃないかと錯覚するほどでした。
それから2年。先日、きなちゃんが亡くなりました。最後はお母さんの腕の中で眠るように亡くなったそうです。飼い主さんは、この治療によってキナちゃんと生活することのできた2年をほんとうに感謝してくださいました。僕たち病院にスタッフのおかげで、2年も余分に時間をもらうことができましたと言ってくださりました。これは僕たちにとっては何よりうれしい言葉でした。
はじめに来院されたとき衰弱したキナちゃんに、麻酔をかけて胃瘻チューブをいれるという決断は、飼い主さんにとって、難しい選択だった思います。でも、その選択にキナちゃんががんばって応えてくれたんだと思います。
まさに奇跡の2年でした。