おなかを切らずに膀胱結石摘出
院長の雑談 2016.05.13
このかわいい子はシュナウザーのROROちゃん。とってもいい子で、本当にかわいいんです(^.^)。
ロロちゃんは今日、膀胱結石の手術をしました。
以前のブログにも書きましたが、動物医療センター・ALOHAとあそう動物病院では低侵襲(動物に負担の少ない)の手術や処置をいろんな分野で実践していますが、膀胱結石もその一つです。
膀胱結石は今でも犬や猫で多い病気ですが、犬の結石に関しては以前多かったストルバイト結石は割合としては少なくなってきていて、シュウ酸カルシウムの結石が多くなっています。ストルバイト結石は食事療法で溶かすことができる場合が多い結石なんですが、このシュウ酸カルシウムの結石は食事療法で溶かすことが難しく、また再発防止もなかなか難しい結石です。
今回のROROちゃんの結石の摘出には膀胱鏡を使いました。膀胱鏡とは尿道から膀胱に入れていくカメラで、簡単に言えばいわゆる胃カメラ(消化器内視鏡)の膀胱版ですね。そして胃カメラなどと同じように、なかに処置する器具を入れる穴が開いています。
尿道を通らないサイズの石を摘出するのは無理ですが、尿道を通過する程度の結石であれば、おなかや膀胱を切開しなくても結石を摘出できます。おなかを切らないわけですから、痛みもほとんど無いですし、その日のうちにおうちに帰ることができます。入院もないので飼い主さんも動物も寂しい思いをしなくていいわけです。
ROROちゃんの膀胱には大小あわせて100個以上の結石がありましたが、大きなものは鉗子ではさんで摘出し、小さいものは膀胱鏡で吸い取りました。
ここからは写真が出ますから、苦手な方は見ないで下さい。大丈夫な人は「続きを読む」をクリックして下さいね。
これが尿道に膀胱鏡を入れたところです。尿道の粘膜がひだ状になって奥に続いています。
そのまま膀胱鏡を奥にすすめていくと、むこうに大きく開いた部分が見えますよね。ここが膀胱の入り口です。いよいよ膀胱内に入ります。
奥に黄色いものがたくさんあるのが分かりますか?これが膀胱結石です。いっぱいありますね。いつも思うんですが、結構キレイで、まるで金の塊のように見えますね。
そして、尿を洗浄すると、透明度が増してよく見えてきます、結石の周辺の粘膜から、結石の刺激で出血しているのが見えますね。結石による慢性的な刺激は粘膜の肥厚や出血を起こすのがよくわかります。
そしてここからは結石を鉗子で摘出、吸引して処置は終わりです。
100個以上結石がありましたが、トータルで1時間弱で終わりです。
これが摘出した大小様々なサイズの結石です。
見てもらったように膀胱鏡の手術は非常に負担が少なくて動物にとってメリットのある手術だと思っています。ただ、欠点もあります。
1番は膀胱鏡の入らないサイズの動物にはこの処置をしてあげれないと言うことです。個体差がありますがおおよそ女の子の場合は3kg、男の子の場合は尿道が湾曲して長いため10kg以上じゃないとこの処置はできません。また、結石のサイズが尿道を通過できないサイズの場合も適応にはなりません。
ただ、もし膀胱鏡が入らなかったり、結石のサイズが大きくて尿道を通過できないサイズの個でも、おなかに小さい切開をして、膀胱鏡を入れることで、小さな傷で結石の摘出を行うことは可能です。どうしても少し切開しなければいけませんが、それでも切開のサイズは1cmから2cmなので、通常の膀胱切開に比べたらかなり小さい傷です。
当院ではほとんどの膀胱結石の手術をこの膀胱鏡でやっています。
他にも動物の負担が少ない低侵襲の手術をいろいろおこなっています。また、ご紹介しますね。