腹腔鏡下での肝生検
院長の雑談 2016.01.24
この写真ってなにか分かりますか?
実はこれは腹腔鏡で見た胆嚢と肝臓なんです。
動物が体調を崩して病院に来院したときやすごく元気だけど検診等で血液検査をした時など、肝臓の数値が高いと言うことが時々あります。もしかしたらみなさんのわんこやにゃんも同じような経験をされたことがあるかも知れませんね。
このような時、僕たち獣医師はどうして肝臓の数値が高いんだろうって考えます。そして原因は何かを突き止めたいと思います。
なぜかというと、肝臓の数値が高い原因はものすごくたくさんあるから。
例えば食事の影響のこともあれば、胆嚢の病気、膵炎、中毒、肝炎、腫瘍、先天性の病気など本当に多くの病気が原因で肝臓の数値が高くなったりします。
そして、それらの原因の中には原因をちゃんと突き止めなければ、治せない病気も多くあります。
なので、血液検査で肝臓の数値が高いときは、問診で食事の問題がないかの確認をしたり、追加検査でエコーやレントゲンなどをおこなったりします。先天性の血管異常が疑われる場合にはCT検査をおこなう事だってあります。
でも、それらの画像の検査で大きな異常が認められなかったりした場合は、直接肝臓の細胞を取ってきて検査をおこなう肝生検という検査をする場合があります。もちろん、肝臓の数値が高いからと言って全ての子がこの検査が必要なわけではなく、どうしても原因が分からなくて、でもちゃんと治療をおこなわなければどんどん悪化してしまう可能性があったり、治療に対する反応が悪かったりする場合におこないます。
この肝生検という検査はとても有効な検査ですが、残念なことに多くの病院で一般的におこなわれている検査ではありません。なぜなら、肝臓の組織をとるために開腹しなければならないからです。つまり手術でおなかを開けて、肝臓を一部取ってくるということになります。
これは動物にとって結構侵襲の強い検査になりますから、なかなか飼い主さんも希望されない場合も多いです。
動物医療センター・ALOHAやあそう動物病院では、この肝生検の検査にも腹腔鏡を使います。通常だと少なくても10cmはおなかをあけないとできない検査が、5〜10mmの小さな穴を1〜2カ所開けるだけで、この写真の様におなかの中を観察でき、肝臓の一部を取ってきて検査する事ができます。胆嚢の状態や肝臓の見た目の状態も手に取るように分かります。
ちゃんと病気を診断して、適切な治療を行うだけでなく、検査をうける動物の負担を小さくしてあげたい。そういう気持ちでこの方法をとっています。
このように腹腔鏡は人だけでなく、動物の治療や検査にもとても役立つ方法です。