右大動脈弓遺残
院長の雑談 2014.08.04
先日紹介で来院された子猫のチビちゃん。まだ生後2カ月で600gちょっとしかありません。チビちゃんは食欲はあるのですが、食べたら吐いてしまうと言うことで主治医の先生のところに行かれたそうです。
そこで、主治医の先生はある病気を疑ってバリウム造影をおこないました。
すると、その先生の想像していたとおり、心臓の前では食道が拡張していて、心臓の部分で狭窄し、流れが悪くなっていることが分かりました。
若い動物が固形物を食べ始めた頃から嘔吐(実際は吐出と言います)する場合、右大動脈弓遺残という先天性の病気がある場合があります。生まれた後に、本来は無くなってしまうはずの血管が残ることで、食道を拘縮(締め付ける)する形になり、固形物が通らないことで症状がでます。
ただ、それ以外にも吐出をする病気もありますので、術前に確実な診断をするためにCT検査をおこないました。実際先月も同じ症状の子猫が紹介で来院されましたが、残念ながらその子は原因不明の食道狭窄で、成長をまって食道拡張を行う予定です。
でも、チビちゃんの場合、CT検査で明らかな右大動脈弓の遺残が確認されたので、CT後、手術に入りました。手術は肋間開胸(肋骨の間から胸を開けて、食道を締め付けている動脈管索を切除します。チビちゃんは600gちょっとしかない小さな子猫なので、正常な組織を痛めないように、拡大鏡をつけて手術をおこないます。無事、動脈管索も切除し、内視鏡で狭窄していた食道がちゃんと通るようになっているのを確認後、食道チューブを入れて、1時間程度で手術を終えました。
拡張している食道がすぐに戻るわけではありませんから、数週間は食道チューブからの食事を与えていかなければいけません。
飼い主さんにも食道チューブからの給餌を覚えてもらい、もうすぐ他院予定です(^.^)。
チビちゃん、はやく自分の口で思いっきり食べれるようになるといいね。