先天性第Ⅶ因子欠乏症
あそう動物病院とAnimal Care-Hospital ALOHAでは、手術前には基本的に凝固系検査を行っています。
凝固系検査とは、出血をしたときに、血を止める能力(凝固能)がちゃんとあるかどうかを調べる検査です。この凝固能に異常があった場合(たとえば人の血友病の患者さんのように)、ちょっとした出血が止まらずに命を落としてしまうことも考えられるからです。当然、人では手術前に当たり前のように行われる検査です。
しかし、動物病院では、まだこの凝固系の検査を術前検査として行っている病院は非常に少ないのが現状です。たしかに、ほとんどの子はこの凝固系検査に異常がでることはなく、問題なく手術を行うことができます。でも、非常に少ない確率ですが、この凝固系検査に異常がある子がいます。このことに気がつかずに手術を行うと、場合によっては命を落と可能性もあるため、安全に手術を行うためには絶対に必要な検査だと思っています。
仮に1万匹に1匹凝固能に異常があった子がいるとします。その子が手術で止血異常がおこり、死亡してしまった場合、それをその子の体質だからしょうがないという考え方もあるかもしれません。でも、検査を行えば回避できる可能性が高いので体質でかたづけてしまうのはどうかと思っています。当然、凝固系の検査を行う検査費用を飼い主さんに負担していただくことにはなるのですが、安全に手術を行うためにご理解いただければと思います。
先日避妊手術と乳歯抜歯で来院したラブちゃん。術前の凝固系検査でPTという項目が延長していました。再検査をしても同じく延長していたため、手術を延期し、1週間の間ビタミンKを飲ませていただいて、一週間後に再検査しました。でも、ラブちゃんは再検査でもPTが延長していたため、凝固因子(血液を止めるために必要な成分です)の活性を大学で調べてもらったところ、第Ⅶ因子欠乏症だということが分かりました。
凝固系検査を行わずに手術していたら、大変な事になっていたかもしれません。ほんとに良かったです(^_^;)
このような病気は日常生活には何の問題も起こさないことがほとんどですから、いっしょに生活されるには特別な心配はいりません。
ビーグルには比較的多いとされていますので、ビーグルを飼われている患者さんは一度凝固能の検査をしてみるのもいいかもしれませんね。基本的には治療が必要な病気ではありませんが、なにか大きな怪我や手術が必要になったときに、この病気を持っているかどうかを知っておくことは意味のあることだと思います。