輸血
みなさんは、動物病院でも人と同じように輸血が行われることがあることをご存じでしょうか?実は輸血ができたから助けてあげることができた命がたくさんあるんです。貧血がひどい状態で手術を行わなければならない時や、免疫介在性溶血液貧血、バベシア、DIC、猫のウイルス疾患、リンパ腫などの貧血を伴う腫瘍などたくさんの病気で輸血が必要になることがあります。
人の場合は、献血と言うことで血液をプールしたり、手術を受ける前に自分の血液を何回かあらかじめストックしておいて使う方法などがとられますが、動物の場合はまだそこまで確立していないのが現状で、なおかつ輸血が必要な時はほとんどが緊急です。
昨日、急に元気、食欲がなくなったという主訴で来院したリッキー君。歯肉を見てみると真っ白です。重度の貧血が起きている可能性が高いため、血液を検査させていただくと、HCT(ヘマトクリット値)という数字が8.5しかありません(正常は37?55です)。つまり赤血球が正常の1/5しかないということです。HCTが10をきると、貧血だけでも死んでしまうことがあるくらいの緊急事態です。リッキー君の場合、再生像という新しい血液をつくる動きは非常に活発でしたが、黄疸があるため、溶血性貧血という体の中で血液が壊れてしまう貧血だということがわかりました。さらに鑑別をすすめると、溶血を起こしている原因がマダニから感染するバベシア症という事がわかり、さっそく治療を始めました。しかし、HCTがかなり低いため、治療の効果がでるまで体が持ちこたえれない可能性があります。そこで飼い主さんと相談の上、輸血を行うことになりました。
あそう動物病院では飼い主さんに輸血が必要なときに献血してくださる方を登録していただいています。昨日はbaffyちゃんとlucaちゃんが協力してくれました。2人ともとってもいい子で、献血してくれました。さっそくリッキー君に輸血を行いました(輸血の前には犬の場合DEA1.1の有無(猫の場合は血液型)やクロスマッチを行って、輸血が安全に行えるかを確認します)。バフィーちゃんとルーカちゃんからもらった血液のお陰で、リッキー君はひとまず元気になり、ゴハンも食べれるようになりました。そして今日の検査でも、昨日の輸血後よりも貧血の数字は改善しており、バベシアに対する治療の効果も出ているようで一安心です。
バフィーちゃん、ルーカちゃんありがとうね。
そして今日、4ヵ月前から貧血で治療している猫のフーちゃんが来院しました。フーちゃんはまだ1才ですが、猫白血病ウイルスに感染していて、そのせいで貧血を起こしています。骨髄を検査しても、骨髄はほとんどの骨髄の細胞は脂肪に置き換わり、自分でほとんど血液を作ることができません。人ではこのような場合、骨髄移植を行うと思いますが、動物の場合、まだまだそこまでの治療は行えません。フーちゃんは今、自分で血液が作れないため、輸血した血液のお陰で生きていくことができています。飼い主さんといっしょにいることができています。
フーちゃんの骨髄検査で骨髄がだめになっているとわかったときに、非常に悩みました。十分な輸血をしてあげることもできないし、もし輸血を行うとしても、ほぼフル回転でうちの猫から血液をもらわなければいけません。どうしてあげたらいいのか本当に悩みました。でも、輸血さえしてあげれば、フーちゃんは比較的元気に飼い主さんと生活することができます。それにまだ1才です。悩んだ末に飼い主さんに、どこまでやってあげれるかわからないし、繰り返しの輸血になるから、輸血の副作用なども起こるかもしれません、それでも良かったらいけるところまでふーちゃんに輸血をしていきましょうとお話ししました。フーちゃんの飼い主さんも、できるだけフーちゃんと一緒にいたいので、そうして下さいと言うことでした。
今、フーちゃんは約2週間に1回の輸血を行っています。そして、今日、フーちゃんが輸血が必要なくらいHCTが低下しました。しかし、うちの猫が前回の輸血からあまり日にちがたっていないため、登録していただいているチビ助君とレイ君に献血をお願いしました。チビ助君とレイ君の献血のお陰で、またフーちゃんは少しの間かもしれませんが、飼い主さんと元気に暮らすことができます。
献血をしてくれたみんな、そしてその飼い主さんに感謝の気持ちでいっぱいです。ほんとうにほんとうに、みんなありがとう。もらった血液は1滴も無駄にせずに使うからね。
気持ちを伝えたかったので、今日のブログは長い・・・・読みにくくてすいません。