副甲状腺（上皮小体）機能低下症

歩行異常と発作、呼吸促迫を主訴で来院したケリーちゃん。当初、神経学的検査で右前肢、後肢に固有知覚反射の消失があったため、脳疾患や線維軟骨塞栓症なども疑っていましたが、血液検査で重度の低カルシウム血症が認められました。低カルシウム血症も、同様の症状を出すため、まず注射と点滴でカルシウムをあげてみて症状が改善するか確認しました。すると、やはり血液中のカルシウム濃度が上昇するとすべての症状がなくなり、とても元気になります。つまり低カルシウムによって症状が出ていることがわかりました。
そこで低カルシウムを起こしている原因を鑑別診断していくと、上皮小体という体のカルシウムを調節するホルモンを出している臓器の機能が低下して、ホルモン濃度が非常に下がっていることがわかり、副甲状腺（上皮小体）機能低下症と診断しました。
治療は基本的にはカルシウムとビタミンDの補給になるのですが、点滴から内服のカルシウムに切り替えたとたん、またカルシウム濃度が下がってきます。非常に悩んだあげく、カルシウム製剤を変更することで、急にカルシウム濃度が安定してきました。これで一安心です。
カルシウムとビタミンDの補給、それと定期的な検査が必要ですが、なんとかコントロールできそうです。