食道異物
先日元気食欲の低下で来院したチワワのシーちゃん。
日曜日の診察終了ぎりぎりの来院でしたが、一目でかなり衰弱していることが分かるほど元気がありませんでした。診察台におろしても、全く動きません。
飼い主さんにお話を聞いても、これといった症状(たとえば嘔吐や下痢など)もなく、ただ食欲が落ちて元気がなくなったそうです。まず、念入りに身体検査を行いましたが、微熱があるくらいで大きな異常は認められません。でも、シーちゃんはこれだけ元気がないのですから、なにか異常があるに決まっています。飼い主さんと相談の上、血液検査とレントゲンの検査を行いました。
血液検査では白血球数の低下(正常の半分程度)が認められ、なおかつ左方移動という感染症を示す白血球像と組織の壊死などを示す単球の増加症が認められました。またレントゲンで食道部にレントゲンの不透過性亢進(簡単に言うと白く見える部分、本来食道はレントゲンでは写ってきません)が認められました。
嘔吐などはないのですが、検査からは食道異物とそれに伴う食道の感染、壊死まで起こっていることが考えられました。念のために食道造影を行いましたが(穿孔の可能性もあったので、バリウムではなく、ヨード系の造影剤を用いました。穿孔していた場合、そこから漏れたバリウムは重度の炎症を起こしてしまうからです)。食道造影でも食道異物に間違いなさそうです。ただ、シーちゃんは全身状態が悪く、すぐに麻酔をかけて、異物を摘出することができそうにありません。とりあえず2時間ほど輸液をして、少し状態が改善した時点で麻酔をかけ、内視鏡を入れました。やはり食道異物があります。異物は簡単に摘出できましたが、摘出後に詰まっていた部分を確認すると、食道粘膜の一部が大きくえぐれており、今にも穿孔しそうです。ただ、造影の検査で造影剤の漏れがないことから、まだ穿孔はしてなさそうです。閉塞してすぐの食道異物であれば、そのまま退院できるのですが、シーちゃんの場合、重度の食道炎があるため、絶食が必要です。入院して治療を行うことになりました。今日は入院して2日目ですが、レントゲンでは穿孔の兆しはありませんが、血液中のアルブミンが下がってきたため、栄養管理のための胃チューブの設置と併せて、再度食道を確認しました。すると、あんなにひどかった食道部がまだ潰瘍はあるものの、かなり修復されてきていました。ほんと、からだってすごいですね。
通常、食道異物は嘔吐が出ますから、飼い主さんも比較的早く気づくと思いますが、今回のシーちゃんのように嘔吐がない場合、時間が経過してしまい、危険な場合もあります。一般的には異物が閉塞して24時間以内の摘出が必要と言われています。ほんと、すぐに診断できて良かったです。おそらく1日遅れただけで、ダメだったのではないかと思います。ちなみに異物はブタ耳でした。
食道異物は比較的見ることの多い病気ですが、なぜかチワワが非常に多い気がします。チワワを飼ってる方は気をつけてあげてくださいね。異物としてはグリニーズなどのガム、ブタ耳、ささみジャーキーが多いです。