あきらめないという事
嘔吐と食欲の低下で来院したM・ダックスのさっちゃん、なんと18歳のおばあちゃんです。血液検査で腎不全を起こしていることがわかり、入院での治療となりました。でも入院で輸液を行いましたが、尿量が非常に少なく、乏尿の状態ということがわかりました。尿が出ないため、老廃物はどんどん体内に蓄積され、みるみる状態は悪くなっていきました。飼い主さんにはおそらく今の状態では1?2日しかもたないということ、もし少しでも可能性にかけるのであれば腹膜透析を行って、尿が出るのを待つという方法もあるが、尿が出てくれるかどうかはわからず、うまくいく可能性は非常に低いということなどをお話ししました。飼い主さんはご家族で相談され、さっちゃんに1日でも長く生きてほしいということで腹膜透析をして下さいと話され、涙を流されていました。さっちゃんは状態が悪いため、局所麻酔で腹膜透析のカテーテルを腹腔内に留置し、腹膜透析が開始されました。スタッフからは「ここまで状態が悪くて、年なのにここまでやるんですか」というような雰囲気が伝わってきました(声には出しませんが)。そんな空気をびしびし背中に感じながら、腹膜透析で腎臓の数字は下がりはじめ、3日目には尿量が増えてきました。さっちゃんは驚くほどの回復を見せ、一時は病院では拒食という困った問題もありましたが、入院から通院に切り替えたり、飼い主さんのがんばりで、今では腎臓病の処方食も食べてくれるようになり、とても元気になりました。
さっちゃんが元気になった時、スタッフに「腹膜透析をしてるときに、もうここまで状態が悪いのに、そこまでするんですか?っていう空気が病院にあっただろう?」って聞きました。すると「確かにそう思いました。でもあきらめたらダメなんですね」という答えが返ってきました。確かにあきらめていたら今の元気なさっちゃんはいなくて、間違いなく亡くなっていたと思います。治療をあきらめる、あきらめないは僕たちが決めることではなくて、飼い主さんが決めることなんだ。飼い主さんがあきらめずに、治療を希望されるのであれば、僕たちは全力で治療することだけなんだということがまたスタッフのみんなにも伝わったと思います。