胆嚢粘液嚢腫や胆嚢炎
9月〜10月にかけては胆嚢の手術も多くありました。
紹介で来院された子達は胆嚢粘液嚢腫から胆嚢破裂を起こし、腹膜炎を起こしていましたし、転院で来院した子は重度の胆嚢炎で見たこともないほど胆嚢が拡張し、嘔吐と食欲不振の症状が続いていたそうです。
今までにも何度か書いたことがあるかも知れませんが、胆嚢の病気に関して今日は少し書きたいと思います。
ここ数年、飼い主さんとよく話す事ですが、胆嚢の病気と膵炎は昔に比べてすごく増えている気がします。もしかしたらエコーや膵炎で特異的に上昇する検査など、様々な検査の感度が上がっていますから、そのおかげで発見することが昔に比べて多くなったというのも一部あるかも知れませんが、その辺りを加味してもやはり多くなったと思っています。
原因は分かりませんが、やはり人と同じように動物たちにとっても食生活が豊かになったのも原因の一つだと思います。また、極端にいうと、もしかしたら今のフードは犬たちにとっては必ずしもいいとは言えないのかもしれません(ちょっと極端に自分の考えを書いていますが、僕個人の感想であって、根拠などはありません)。
左のCT検査の画像は食欲不振と嘔吐を主訴に転院されてきたわんこの画像です。転院前の病院では膵炎という診断で治療を受けていました。膵炎もとても多いですし、SpeccPLという膵炎に特異性の高い検査で陽性だったと言うことなので膵炎と僕も思いましたが、念のために腹部超音波検査をさせていただきました。すると、お腹の中にかなり大きく拡張した胆嚢と思われるものがありました。また、膵炎の特徴である膵臓周囲の脂肪の高エコー化が認められませんでした。そのため、飼い主さんと相談してCT検査をおこないました。結果、かなり重度に拡張した胆嚢(僕が今までみた胆嚢の中で最大だと思います)が確認されました.それ以外には異常が認められませんでしたから、この胆嚢が症状を出している原因と思われました。そのお話を飼い主さんいお伝えし、手術を行いました。嘔吐はすぐに改善したのですが、肝臓自体もかなりダメージがひどかったので、術後の回復に少し時間がかかりましたが、やっと食欲も出てきました。
右の写真は紹介で来院された胆嚢粘液嚢腫から胆嚢破裂を起こした子の摘出した胆嚢の写真です。胆嚢内は本来は胆汁という液体で満たされていますが、この写真の子の胆嚢は(写真は半分に割れ目を入れていますが)中がゼリー状のもので充満しています。これが胆嚢粘液嚢腫という病気で、胆嚢破裂のリスクが高くなります。破裂だけでなく閉塞を起こす原因にもなりますし、周囲の損傷がひどくて周囲の肝臓を同時に摘出しないといけない場合もあります。
胆嚢の病気には粘液嚢腫や胆嚢炎以外に胆泥症などもあります。この胆泥症も多い病気で治療に関しては先生によってまちまちな部分もあります。このあたりに関しても、また書ければと思います。