気管虚脱に対する外科治療
病気 2021.12.09
動物医療センター・ALOHAでは大分のAMC末松どうぶつ病院の末松正弘先生に来ていただいて呼吸器、特に気管虚脱と喉頭麻痺に対する外科治療をおこなっていただいています。
末松先生はアメリカのVet surgに気管虚脱の論文をアジアから唯一掲載されており、外科治療の成績は世界トップクラスです。
最近徐々にその事が浸透して広島県だけでなく岡山県や兵庫県などからもご紹介いただくようになってきました。
ただ実際は飼い主さんがご自身で検索されて問い合わせいただくパターンとかかりつけの先生からご紹介いただくパターンが半々です。
術後の定期検診や継続治療などを考えると、かかりつけの先生からのご紹介の方がスムーズだと思いますが、気管虚脱に対する外科治療ができる施設は非常に少なく獣医師の多くがまだ内科治療で管理するしかないと思われていることも少なくないと考えています。
ただ気管虚脱の手術をした子の術後の生活の質がかなり改善して、飼い主さんが喜ばれるのを見ると、もっと手術について啓蒙しなければと思っています。
このレントゲンは先週末に手術を行ったこの術前のレントゲンです。矢印の部分の気管が細いのがよくわかります。
そしてこれが術後のレントゲン写真です。細かった気管が拡張しているのがわかります。
呼吸もとても楽そうです。
気管虚脱が原因で外科手術を受けることができず、ずっと苦しい状態で生活している子、お家にいながら酸素室に入っていなければいけない子、咳で生活の質が低い子などまだまだたくさんの苦しんでいる子がいると思います。
末松先生に来ていただく事で、広島県だけでなく近隣の県の動物や飼い主さんのお力になれればと思っています。
来週もまた気管虚脱の手術や気管支鏡の検査が入っています。
少しでも多くの子が呼吸が楽になるよう、スタッフみんなでサポートしていきたいと思います。
末松正弘
AMC末松どうぶつ病院 呼吸器・循環器センター長 獣医循環器学会認定医・評議員 小動物呼吸器疾患研究会 Small animal respiratory disease study group(SARS) 福岡夜間救急動物病院 技術顧問
2004年 日本獣医生命科学大学卒業
2007年-現在 AMC末松どうぶつ病院
2018年-現在 鹿児島大学大学院 共同獣医学研究科外科学分野所属(気管虚脱、気管移植について)
末松先生の発表、受賞歴です
受賞歴(一部抜粋)
・平成21年 日本小動物獣医学会九州地区学会 坂本賞(最優秀賞)
肺水腫を呈する動脈管開存症に外科的結紮術を行ったイヌ3症例
・平成25年 九州地区獣医師大会 学会⻑賞(最優秀賞)
犬の頚部気管虚脱Grade4 33例に対する外科的矯正術の治療成績
・平成28年 日本小動物獣医学会 九州地区学会⻑賞(最優秀賞)
超小型犬の喉頭麻痺に対して左側披披裂軟骨側方化術を実施した治療成績
・平成28年 中部小動物臨床研究会 最優秀賞
上部気道閉塞の閉塞解除治療を行うことで著しい改善をみた二次性気管虚脱
・平成30年 日本小動物獣医学会 九州地区学会⻑賞(最優秀賞)
小型犬における正常喉頭超音波所見と喉頭麻痺症例の比較検討
・平成30年 日本獣医循環器学会 優秀学会発表賞
迷走神経依存性発作性心房細動の犬の1例
・令和1年 日本小動物獣医学会 九州地区学会長賞(最優秀賞)
犬の喉頭麻痺および喉頭虚脱の合併症例(LPLC)に対して披裂軟骨側方化術を実施した治療成績
・令和2年 第99回日本獣医麻酔外科学会 軟部外科部門優秀賞
気管膜性壁に発生した脂肪腫により気道閉塞を引き起こした犬の1例
<論文>
・末松正弘ら.低体重犬の重度肺動脈狭窄症に対して経右室バルーン弁拡大術を 実施した犬の1例.動物の循環器 vol.49(1),35-38(2016)
・Fukushima R. Tanaka R. Suematsu M.et al. Clinical Efficacy of Pimobendan on Cats with Systolic Heart Failure.動物臨床医学 19(1), 1-7, 2010.
・Suematsu M, Suematsu H, Minamoto T, Machida N, Hirao D, Fujiki M. Long-term outcomes of 54 dogs with tracheal collapse treated with a continuous extraluminal tracheal prosthesis. Veterinary Surgery. 2019;48(5):825-834.
Suematsu M. Diagnosis and treatment of upper airway, tracheal diseases. Journal of Veterinary Cardiovascular Medicine. 2019; 3, 1‒7.