インスリノーマ

奥歯の破折を主訴に車で1時間半もかけて来院してくれたコーギーのファルコン君。上顎の第4前臼歯の破折で、麻酔をかけての処置が必要と診断し、まずは術前検査を行いました。
すると、血糖値が何度か再検査しても低かったため、歯の処置よりも先に低血糖を起こす病気の鑑別をしましょうと、飼い主さんとご相談しました。
低血糖を起こす病気にはいくつかありますが、それらをエコーやホルモン検査などで一つ一つ除外していき、ファルコン君の低血糖を起こしている病気はインスリノーマの可能性が高くなってきました。
インスリノーマとは、膵臓のインスリンを分泌する細胞が腫瘍化するもので悪性腫瘍です。インスリンは正常の動物の中で、血糖値を下げる働きをしているため、血糖値が上昇したら分泌されて、血糖値を下げてくれます。でも、インスリノーマの場合、血糖値に関係なくインスリンを分泌し続けますので血糖値はどんどん下がっていきます。
ファルコン君は血中のインスリン値が低血糖にもかかわらず、上昇していて、インスリノーマを診断する計算式(AIGR)で、インスリンの疑いが高いと診断されました。ただ、このAIGRはインスリノーマに対する感度はとても高いのですが、特異性が低いため(つまりインスリノーマを見逃すことは少ないんですが、インスリノーマ以外の低血糖もインスリノーマの疑いありとしてしまう可能性があるということです。ややこしいですね(^_^;))、最終的には試験開腹によって病理検査で診断しなければいけません。

ファルコン君の飼い主さんは試験開腹を行うことを決断されたため、昨日の夜、飼い主さんの立ち会いの下で試験開腹を実施しました。
手術前の血糖値はなんと31。ものすごく低い数字です。それから2時間ブドウ糖の入った点滴を流しましたが、それでも49までしか血糖値が上がりません。さらにブドウ糖を静脈注射してなんとか69まで血糖値を上げて、試験開腹に入りました。
膵臓を丁寧に触診していくと、膵臓の作用に1cm程度の大きさの固いしころがありました。それを丁寧に剥離して切除し、周囲のリンパ節や肝臓をチェックして手術を終えました。
術後、あれだけブドウ糖を点滴してもあがらなかったファルコン君の血糖値は140近くまであがっていました。また、今日ブドウ糖の点滴を止めても、低血糖はおこりません。病理検査の結果を待たなければいけませんが、手術で摘出したしこりがインスリノーマなのは間違いなさそうです。

インスリノーマは悪性腫瘍で、非常に転移率の高い腫瘍です。もしかしたらファルコン君も将来、再発や転移が起こるかもしれません。でも、内科療法だけをおこなった子よりも手術をおこなった子の方が生存期間が長いと報告されていますし、術後に血糖値が正常になった子は、より生存期間が長いと言われています。そう言う意味では、今回奥歯の破折がきっかけで、術前検査で異常が見つかり、診断・治療とスムーズにおこなうことができたのは、ファルコン君にとって、とてもラッキーだったと思います。たまたまだけど、歯が折れて良かったね!(もちろん、歯の治療も一緒に行いましたよ)


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